• 倉貫義人

    株式会社ソニックガーデン代表取締役

    大手SIerにてプログラマやマネージャとして経験を積んだのち、2011年に自ら立ち上げた社内ベンチャーのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。ソフトウェア受託開発で、月額定額&成果契約の顧問サービス提供する新しいビジネスモデル「納品のない受託開発」を展開。
    会社経営においても、全社員リモートワーク、本社オフィスの撤廃、管理のない会社経営など様々な先進的な取り組みを実践。著書に『「納品」をなくせばうまくいく』『リモートチームでうまくいく』など。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。
    ブログ:http://kuranuki.sonicgarden.jp/

  • 中村圭志

    株式会社ISAO代表取締役

    豊田通商入社後、ドイツの関係会社へ出向、代表就任。
    2010年10月、株式会社ISAO代表取締役に就任。傾いていた事業を立て直し、ISAOを救う。徐々に組織の在り方を変えながら、2015年からバリフラットモデルと称して役職や階層を一切排除したフラットな経営を進める。ISAOを”世界のシゴトをたのしくするビジョナリーカンパニー”にするべく、自らもTeam ISAOの一員として経営を行う。

今回は「納品しない、出社しない、管理しない」とユニークなビジネスモデル、組織形態で注目を集めている「ソニックガーデン」倉貫社長との対談です。
ソフトウェア開発会社なのに納品しないってどういうこと?どうして管理しなくなったの?など、対談前から疑問点が沸々湧いてきましたが、話を聞いてみるとISAOと考え方が近かった!?
プロフェッショナルなプログラマー集団であるソニックガーデン独自の考え方もたくさん聞くことができ、非常に盛り上がった対談となりました。

第一回「はじめに」

対談写真1

まずは、お互いどんな会社なのか紹介しましょう

中村
それでは、ゆるい感じで始めていきましょうか。
倉貫
そうですね。今ISAOさんって社員は何人くらいですか?
中村
240人くらいですね。規模にしてはやっている事業が多いです。
倉貫
240人!?めっちゃいますね。
ホームページ拝見したんですが、4つぐらい事業がありますよね?あれだけじゃなくて、他にも色々やってらっしゃる?
中村
そうですね。
ホームページに載せているのは全てではないんですが、Webシステムやスマホアプリの受託開発もありますし、クライアントとの共同事業もあります。もともと家庭用ゲーム機向けのインターネットサービスプロバイダー(ISP)が始まりなので、ゲーム業界との関わりが深いんです。
倉貫
それじゃ、ゲームの開発もやっているんですか?
中村
いえ、ゲーム業界のクライアントが多くシステム開発もやっていますが、ゲーム自体の開発はやっていません。
倉貫
そこはやっていないんだ。(笑)
中村
2000年当初はプロバイダー時代に構築した資産を生かし、データセンターでのラック貸しやネットワーク貸し等のコロケーションサービスを主力サービスにしていました。
2010年頃からお客様のサーバー環境がオンプレからクラウドへシフトしていきましたので、我々もそこへ食らいついてやっていこうとなりました。
その事業は、いまでは「くらまね」というネーミングになり、AzureやAWSをメインに設計/構築、運用業務を行なっていますが、ゲーム業界の新規顧客は少なくなってきています。新規顧客は、ほぼゲーム業界以外からのお客様になってきています。
その他でいうと、課金認証サービスやゲーム運営事業など。それに加えて最近では、自社サービス、プロダクトを強化しています。
2017年秋には、ゴール達成型社内SNS「Goalous」を有料リリースしています。 また、これも自社プロダクトですが、セキュアかつユーザビリティーの高い2段階認証サービス「Mamoru」をスタートしています。
倉貫
2段階認証の?
中村
はい。パスワードレスな2要素認証です。ログイン画面でIDを入力するだけでスマホにプッシュ通知が届き、通知をタップするとログインできるMamoru PUSH。そしてそれでログインすると、複数のサービスに自由にアクセスできるシングルサインオンのMamoru SSOがあります。
倉貫
なるほど。御社内のエンジニア比率はどれくらいですか?
対談写真2

ISAOでは50代が一番働く!?

中村
エンジニアは正社員の30%強ですかね。人数にすると40人弱。
それ以外はマーケター、営業、開発ディレクション、コーポレート、ゲーム運営などのメンバーで構成されています。
ISAOは、IT企業ですが決して若い会社じゃないんです。正社員の平均年齢は39歳くらい。50代も結構います。
独自のバリフラット制度で社内にヒエラルキーがないので、全員がプレイヤー。 マネージャーはいません。
50代でもバリバリプレーヤーとして働きます。ある意味、日本で50代が一番働く会社かもしれないですね。(笑)
例えばGoalousにWEBから問い合わせがあれば、だいたい僕が直接営業に行きます。
倉貫
中村さん自ら営業に!?
中村
もちろん!ISAOはバリフラットですから。(笑)
僕はISAOの中では経営のリーダーだけでなく、営業という役割も持っています。
バリフラットは部署も役割も区切っていないので、営業が本職の人が、営業以外の仕事にも取り組んだりすることがあります。
かなりフレキシブルにやっています。
倉貫
じゃ、職種すらまたぐこともあります?デザイナーだけど、エンジニアもやりたいみたいな?
中村
理論的には可能です。現状はいませんけど。(笑)
ISAOでは、各個人が専門性を尖らせて強くなるという考えを大切にしています。
一人一人がマーケットで価値を上げる。自分の専門性を武器にマーケットで勝負できることを全員が目指しつつ、そこだけに限定せずに他の領域にも挑戦しやすい環境にしています。
対談写真3
倉貫
挑戦しようと思えば誰でもできるんですか?
中村
できます。
するのは結構大変ですけどね。
倉貫
いきなり転職ではなく、社内で色々試せるというのはいい環境ですよね。
中村
そう思います。
転職して違う職種に挑戦することはとても大変なので、転職ではなく社内で違う職種に挑戦できる機会があるのはいいことだと思っています。
倉貫
ですよね。社内転職してみたら、もしかしたらものすごく向いていたとかあるかもしれませんし。
中村
はい。
バリフラットにこんなに興味を持ってもらえると思わなかったので、嬉しいです。ありがとうございます。
では、そろそろ僕にも色々質問させてください。
ソニックガーデンといえば、「納品のない無い受託開発」と「管理のない無い経営」というキャッチフレーズが有名ですよね。
倉貫さん執筆の本を読んでいるISAOメンバーもいますが、なぜそこに至ったのか教えていただけますか。
対談写真4

受託開発だとみんなハッピーじゃない

倉貫
元々僕らは、TIS株式会社というSIerの社員でした。 社内ベンチャーで始まり、2年後に僕がMBOで買い取り独立しました。なので、転職も起業もしたことがなくTISでずっとサラリーマンをしていました。
その頃から従来の受託開発は誰もハッピーになっていないからダメだな、何とかしたいと思っていました。
中村
ハッピーになっていない受託開発の要因って何だったのでしょうか。
倉貫
まずひとつは、「人月」という考え方です。
元々僕は自分のことをスーパープログラマーだと思っていたんですが、普通の平凡なプログラマーと同じ「人月」で扱われるのが癪でしょうがなかったんです。 プログラマーの世界だと、できない人とできる人の差が生産性で100倍とか1,000倍になります。
また、チームの中にできない人がいると生産性がかえってマイナスになることがあります。
例えば5人のチームでプログラムを作るとします。
その中で、4人ができる人、1人ができない人の場合があるとします。
計算すると、少なく見積もっても4.3人月くらいかなと思うじゃないですか。でも、実際はできない人のフォローもするので、4人月にも満たなくなります。
中村
なるほど。聞いていて、心が痛い人がいるかもしれませんね。(笑)
倉貫
「人月」という考え方で、できる人、できない人を揃えてしまうのは良くないです。
また、人月では生産性を上げるほど、短い期間でできてしまうので一括請負のビジネスでは売上が少なく儲からなくなる。
できない人が10人月のところ、できる人が3人月で完成させたとします。はたから見たらできる人、生産性の高い人の方が稼いでいないように見えますよね。 それってエンジニアにとってハッピーじゃないですよね。
「納品」という考え方にも問題があります。
お客さんから見ると、納品という仕組みがあると納品されした後に直してほしいと思ったとしても直してもらえないので困ります。 作り手も開発段階でお金をもらおうとするので、納品までは頑張るけれど、そこで終わりになってしまう。
納品がゴールの開発は、会社にとってもお客さんにとってもエンジニアにとってもよくないんですよ。
社内ベンチャーとして独立したときはプロダクトを販売していたので、プロダクト販売だけで食べていくのもいいかなと思ったのですが、その場合マーケターや営業も必要となりますよね。
プロダクトを拡大して販売して、いざ営業を雇おうとなったとき、プログラマーの集団だと営業の人の良し悪しが判断できない。 プログラマーの人なら会って話して、コードを書いてもらえば技術力がわかりますが、営業の人ってみんなめちゃくちゃ口がうまいじゃないですか。なので違いがわからない。(笑)
だったら、営業がいなくても大丈夫な会社にしようと決めました。
対談写真5
「ビジョナリーカンパニー2」という会社のビジョンの作り方が書かれた本を読んだら、「同じバスに乗っている人の顔を見て行き先決めましょう」って書いてあって、なるほどと思いました。
一緒に独立する5人の顔を見たら全員プログラマー。
「よし!じゃ、プログラマーの会社にしよう。プログラマーがずっとハッピーで一生の仕事としてやっていける会社にしよう。」というのがソニックガーデンの始まりです。
プログラマー集団としてやっていくにはまずは受託開発をやらなければならない。
でも、さっき言った3重苦(人月、納品、エンジニアがハッピーじゃない)には戻りたくない。
納品があるからみんな困っている。
お客さんにずっと付き合っていった方がみんなハッピーじゃないかということと、自分たちが小さい会社で独立して勝てる領域は?と考えたときに納品をなくそうと決めました。

納品のない受託開発とは?

倉貫
「納品のない受託開発」は従来の人月という考え方とは違い、一人一人がお客様の顧問プログラマーになります。 顧問弁護士や顧問税理士と同じです。
「新規事業始めたい」「業務を改善したい」ってときに、社員に優秀なエンジニアがいてくれたらかなり助かるじゃないですか。 しかし、だいたいの会社はそういう人がいらっしゃらない。 特に日本の場合は、スタートアップで起業する人はエンジニアじゃない場合が多い。
マーケティングができたり人脈はあるけど、エンジニアリングが分からなかったり。
さっき僕が営業の採用が分からないといったように、エンジニアじゃない人にはいいエンジニアがわからない。
すごい経歴だから実力もあるだろうと思って採用してみたら、全然コードがかけないということもあるそうです。そういったところに僕らが社内のエンジニアみたいな形で入る。というのが「納品のない無い受託開発」です。
サービスの企画段階から入り、そこから一緒にお仕事をやっていきます。
中村
テクニカルアドバイザーのような役割ですか?それとも実際に手を動かすところまでやるのでしょうか?
倉貫
がっつり手を動かしますね。スタートアップ企業など、CTOがまだいない会社のCTOになるイメージです。また中小企業の場合、社内にいないCIOの仕事も僕らが請け負います。
エンジニアはそこでお客様と話をし、困っていることをきいて、それに答えるだけではなく自分でつくって動かす。僕らはこの両方を同時にやることが大事だなと思っています。
プログラマーがどうやったら一番ハッピーかと考えたときに、欲しい人と作れる人が直接話すのが一番だなと。 間に誰かが入って言われたとおりにつくるだけって面白くないし、自分で作ったものを直接喜んでもらいたいじゃないですか。
そうなるとプログラミングだけじゃなくて、コンサルも含めてやらなきゃいけないよねっていうのが僕らの定義するプログラマーです。
ソニックガーデンのプログラマーは、要件定義、設計、必要であればデザイン、そしてプログラミングして、クラウドで運用します。 一人で全部できるようになると、その人だけで仕事が完結するようになります。
そうなるとそのプログラマーが、お客様のことに関しても、そこで使われている技術に関しても一番良く分かっているので、上司が必要なくなります。
細かく管理されるより、責任感がでてきて、結果として生産性が上がる。
上司が要らない会社にしようとなりました。
そこから出発して、徐々に管理も減らしていきました。
営業も人事もいません。広報もいません。会社へ問い合わせが来たら、私が担当します。(笑)
不要な役割をどんどん省いていった結果、今の会社のカタチになりました。 部署も作らず管理もせず、僕らもバリフラットでやっています。中間管理職もいないので、セルフマネジメントです。

第二回「ソニックガーデン>フリーランス>会社になれば誰も辞めない」
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